槍ヶ岳・北鎌尾根
8/27 中房温泉〜大天井ヒュッテ(泊)
8/28 大天井ヒュッテ〜貧乏沢〜天井沢〜北鎌沢〜北鎌沢のコル〜北鎌尾根〜槍ヶ岳
     〜槍ヶ岳山荘(泊)
8/29 槍ヶ岳山荘〜上高地

コースタイム:8/27 中房温泉8:10〜燕山荘11:30〜稜線で食事12:00・12:45〜大天井ヒュッテ14:40
         8/28 大天井ヒュッテ3:50〜貧乏沢分岐4:10〜天上沢5:55・6:10〜北鎌沢6:25〜
               北鎌沢右俣分岐6:45〜北鎌沢のコル8:15・8:30〜独標先稜線10:45・11:00〜北鎌平13:05
               〜槍ヶ岳山頂13:50・14:20〜槍ヶ岳山荘14:35
         8/29 槍ヶ岳山荘6:35〜上高地13:15  
槍ヶ岳・北鎌尾根は、登山を志す者にとって特別な響きがあり、この北鎌尾根を舞台に数々のドラマが演じられている。
いつかは、自分もこの栄光の北鎌尾根をと思いながらなかなか実現出来なかったが、今回、思い切って挑戦を試みた。
一般コースと違い明瞭な登山道がある訳ではなく、体力、技術と天気に恵まれる事が成功の条件となる。

8/27
自宅を3:45に出て、穂高温泉郷内の登山者用駐車場に車を置き、タクシーで中房温泉へ。準備をして登山開始。
すぐに汗が噴出しペースが上がらない。合戦小屋のスイカで疲れを癒し燕山荘到着。思ったより時間がかかり疲れもある。
こんな事で北鎌尾根越えられるか不安となる。燕岳はカットし、大天井へ向う。稜線でラーメンと抹茶ミルクの昼食でくつろぐ
と少し元気が出てくる。正面には目指す北鎌尾根が見事である。

           

                         明日向う槍ヶ岳と北鎌尾根

           

                      ’02年秋の反対側の三俣山荘からの北鎌尾根

その後は順調なペースで大天井ヒュッテ到着。まずはビールで乾杯。北鎌のエキスパートである支配人の小池さんにルート
状況を確認し、少しほっとする。しかし、平地の天気は曇りで夕方から雷雨と悪い方に変り心配である。槍ヶ岳は雷銀座であ
り早めの出発が良さそうである。

8/28
ウィダーをすすって3:50ヘッドランプで出発。星も出ているが雲も多く今一のようだ。20分程で貧乏沢へルートへの分岐と
なり、入ろうとするが這い松が濃く、こんなルートを行くのか?と思ったが、すぐに岳樺帯となり踏み跡を下る。しかし、この下り
がかなり急なうえ夜露に濡れ何度もズルズルと滑ってしまう。右から貧乏沢が合流すると多少視界が開け明るくなって来たの
でヘッドランプを外すと、途中で脱ぎ雨蓋の下に入れておいたはずの上着ない(帰りに帽子も無くし、物を無くする山行であった)。
しかも、ポツリポツリ雨が振り出し、弱気の虫が泣き出す。とりあえず天井沢までと決め再び出発。
時々、左側を巻きながら急な沢を下り、やがて沢音が大きくなると天井沢到着。
ヒュッテから900mを下った事になるがまだスタミナは大丈夫のようだ。何より心配していた膝痛が出ずにひと安心。
いつの間にか雨は止み、予定通り行くことに決定。ここで昨日のコンビニおにぎりで朝食休憩。パサパサで旨くないがカロリー
補給のために無理やり流し込む。

            

                   天井沢に到着、大分下り、その分厳しい登りが待っている

15分ほど天井沢を上り北鎌沢の分岐に着くと、3張りのテントがあり出発準備中のようだ。同じルートに他パーティーがいる
と思うと何故か安心であるが、それにしてもゆっくりである。
北鎌沢はいきなりの急登で息が上がる。左俣との分岐で水を補給し右俣を行く。斜度は更に急になり疲れた頃に小さな分岐
となる。ここは、中央の尾根っぽいルートを行くとうっすらと踏み跡がありそれを追う。まれに右のルートをそのまま行って迷う
場合があるようで、前に迷った人のロープ等があり、それを見て安心して進み深みにはまるようだ。
更に登り、斜度が緩くなると写真で見た大きな岳樺が見えれば北鎌沢のコルであり、やっと北鎌尾根上に到着。テント2張り
ほどのスペースがあり休憩にはちょうど良い。チョコレートとカロリーメイトのゼリーで再びカロリー補給。
ここまでだいぶ体力を使ったが、ここからが本番である。気を引き締めて再びスタート。
木の枝や根に捕まりながらの急登である。P8を越え天狗の腰掛に出ると正面に独標が迫ってくる。振り返ると高瀬ダムと
北鎌尾根下部が見える。独標のコルに一旦下り、登り返すと独標が近くトラバースルートのバンドがはっきり見える。

           

                          天狗の腰掛から北鎌尾根下部


           

                         独標が近い、下部がトラバースルート

いよいよ独標のトラバースで慎重に行く。最初のトラバースは特に難しくないが、回り込んでから上の岩が邪魔になる部分が
あり嫌らしい。ザックが引っ掛かってバランスを崩したら奈落の底にまっ逆さまである。ここは安全にハイハイスタイルで安全?
に越える。更にトバースをし、最初にロープのある部分は迷ったがそのままトラバースし、2つ目のロープから直登する。

           

                         独標の最初のトラバースルート

古いロープは使わずに、その岩をクリアーし、そのまま5分ほど直登すると独標先の稜線に飛び出す。正面には北鎌尾根と
槍ヶ岳が大迫力である。その横には笠ヶ岳も見え、不安だった天気も回復し青空が覗く。

           

                      これから行く北鎌尾根と槍ヶ岳の大迫力


           

                            稜線から笠ヶ岳

大福を食べ大休止後、再び出発。ここから基本通りに尾根上を行き、行き止まったら千丈側に弱点を捜しながら行く。P11?
の下りは嫌らしく、ロープも架かっている。ちょっと登り返して再び下りであるが、岩が脆い。迂闊に掴もうものならすぐに取れ
てしまい。一個一個確実なホルードを捜しながら慎重の下る。

           

                      P12?付近から振り返る、左奥が独標

ほとんどが3点支持をしながら緊張の連続で、何度も同じような事を繰り返してP14?の手前から千丈側を大きくトラバースし、
ザクザクの斜面を登りきると信じられない近さに大槍が見える。ここから急な岩場を10分ほど登ると広い北鎌平である。
今までの狭い稜線が嘘のような広い場所で、ほっとする。有名な「ここが北鎌平」と書かれた大きな岩を見ると考え深い。
(文字はだいぶ不明瞭になって読み難い)

           

                             北鎌平からの大槍

ゆっくり休憩していると、またまた雨がポツリポツりと落ちてくる。明るいので、まだ持ちそうであるが、条件の良いうちにと
いよいよクライマックスに挑む。
左の岩の稜線から取り付く。下から見ているといったい何処を登るのか?と思うが、多くの人が登っているのだから何とか
なるに違いないと信じて行く。少し右にルートを取るとロープの架かったチムニーである。ここが下のチムニーのようで右から
越えてゆく。

           

                        下のチムニー、ここは右側から巻く

登りきったら、左にルートを取り、また直登し左に出ると核心部の上のチムニーである。ここも右からから巻こうと取り付くが
中途半端な位置にホールを取ったようで上にも下にも動きが取れない。下は天井沢へ一直線であり、緊張で口から心臓が
出そうである。幸いホールドは安定しており、焦らず次を捜す。一旦、左のチムニーに足がかりを取り、更に左手でホールドを
取り体を移動すると、次のホールドが見つかる。チムニーを抜け、左の天井沢側を登ると木の杭があり、右上には登山者が
見える。ここを5mほど登ると、祠の裏の山頂に飛び出す。

           

                      上のチムニー、もう少し下が核心部?

「ヤーッター」(何度もガッツポーズ)。何度この瞬間をイメージした事か、それが今現実のものとなり何とも言えない達成感で
一杯である(今井さんやりました)。登山者からの「おめでとう」という労いに言葉は実に嬉い。
いつの間にか雨も止み、時々日も差し、まずは記念写真。

           

                   「ヤッター」念願の北鎌尾根からの槍ヶ岳山頂

登山者の記念写真の邪魔ににならないよう、祠の裏で越えてきた北鎌尾根を見ながら感動に浸る。
雲は多いものの、穂高、薬師、水晶、鷲羽、野口五郎なども見えて30分ほどくつろぎ下山にかかる。15分で肩の小屋到着。
ビールで乾杯。美酒に酔いしれる。しかし、既に、いたる所の筋肉が死後硬直状態である。

           

                      越えてきた北鎌尾根を山頂から望む 

8/29
快晴の中下山開始。
既に、筋肉痛であり、無理せず景色を見ながらゆっくり下る。振り返ると、越えてきた槍ヶ岳がいつにもまして美しい姿を
見せていた。

             

                         槍沢から槍ヶ岳を振り返る

途中、ラーメン休憩を挟み、通い慣れたルートを下る。上高地に着く頃には、脚はパンパンに張っていた。
充実感の中、バス、電車を乗り継いで車の回収の為、穂高へ。

北鎌尾根は、やはり厳しいルートで、自分の実力では技術、体力とも一杯一杯であった。ラッキーだたのは思いの外天気に
恵まれた事で、雲がかかり易い槍ヶ岳・北鎌尾根でガスの包まれる事が無く、視界があり、ルートファンティングし易かった
事だろう。